症状もなくいつもと体調も変わらないから大丈夫!と思っていたら・・・
症状が出始めた頃には病気がかなり進行していることも?!
腎臓の病気についてまとめました。
目次
《腎臓の役割》
腎臓は、そらまめのような形をした握りこぶしくらいの大きさで120〜160gの重さで、腰のあたりに左右対称に2個あります。腎臓には5つの機能があります。
老廃物を体から追い出す
腎臓にはネフロンという組織が約100万個あり、毛細血管のかたまりの糸球体と糸球管からつながる尿細管からなります。糸球体でろ過された血液(原尿)は尿細管を経て尿となり、尿中へは血液中の老廃物や不要物が余分な水分とともに体の外へ追い出してくれます。また、原尿が尿細管を通ると時に体に必要な成分や水分は再吸収し、体内に留める働きをしています。腎臓の働きが悪くなると尿が出なくなり、老廃物などが体に蓄積し尿毒症になります。
血圧を調節する
腎臓は、塩分と水分の排出量をコントロールすることによって血圧を調整しています。
血圧が高いときは、塩分と水分の排出量を増加させることで血圧を下げ、血圧が低いときは、塩分と水分の排出量を減少させることで血圧を上げています。また、腎臓は血圧を維持するホルモンを分泌し、血圧が低いときに血圧を上げています。腎臓と血圧は密接に関係しており、影響を与え合っています。
血液をつくる働きを助ける
赤血球は骨髄の中にある細胞が、腎臓から出るホルモン(エリスロポエチン)は骨髄の造血幹細胞に働いて、赤血球の数を調整します。なので、腎臓の働きが悪くなると、このホルモンが出てこなくなってしまうため、血液が十分につくられず貧血になることがあります。
体液量・イオンバランスを調整する
腎臓は体内の体液量やイオンバランスを調節したり、血液を弱アルカリ性に保っています。また、体に必要なミネラルを体内に取り込む役割も担っています。通常、腎臓では絶えず血液がろ過されて一日に約150Lもの原尿が作られていますが、尿細管で水分が再吸収されて1.5Lほどの尿になります。腎臓が悪くなると体液量の調節がうまくいかないため、体のむくみにつながります。 また、イオンバランスがくずれると、疲れやめまいなど、体にさまざまな不調が現れることがあります。
強い骨をつくる
骨の発育には複数の臓器が関わっています。その中でも腎臓は、カルシウムを体内に吸収させるのに必要な活性型ビタミンDを作っています。活性型ビタミンDは小腸からのカルシウムの吸収を促進して、カルシウムの利用を高める作用があります。なので、腎臓の機能が低下するとカルシウムの吸収が悪くなり、骨軟化症や骨粗鬆症等の原因になります。また、低カルシウム血症になると、筋肉痛、しびれ感、全身痙攣発作等が起こります。
《急性糸球体腎炎》
糸球体の炎症によって、タンパク尿や血尿が出る病気を総称して糸球体腎炎と呼ばれています。急性糸球体腎炎は、一般的に4歳~10歳くらいまでの子どもで、秋から冬に多く発症する病気ですが、成人や高齢者でも時々みられています。他の腎臓病と違ってほとんどの場合は完全に治ります。
原因としては、溶血性連鎖球菌(溶連菌)等による扁桃や皮膚の炎症等がきっかけに発生します。症状としては、扁桃やのどの炎症、多くは発熱)が治ってから、1~2週間後に血尿(肉眼では分からないことも多い)やタンパク尿、むくみ、高血圧などが出現します。また、全身倦怠等の症状が出る場合もあります。高血圧の影響で頭痛を訴えたり、吐いたりすることもあります。重症の場合は、尿量が少なくなり、むくみが強くなって肺までむくみがおよび(肺水腫)、呼吸困難となり一時的に透析が必要なこともあります。
治療としては、保存的治療が中心です。安静や水、塩分、タンパク質の食事制限が行われます。急性期には溶連菌に対する抗生物質や高血圧に対して降圧剤と利尿剤が使われることもあります。これらの治療は、発病初期の数日から数週間に限られ、尿の異常以外の症状がなくなったら通常の生活に戻し、薬を服用する必要もありません。
《慢性糸球体腎炎》
タンパク尿や血尿が少なくとも1年以上持続するものをいい、腎臓病の中でも最も多いものです。慢性糸球体腎炎は1つの病気ではなく、様々な病気の総称です。最近の研究によって、慢性糸球体腎炎の中にもいくつかタイプがあり、症状が進行しにくいものもあることが分かっています。
原因としては、免疫反応の異常によるものが多いと考えられています。その中でも原因として一番多い病気がIgA腎症です。症状としては、血尿、タンパク尿、高血圧、めまい、肩こり、むくみ、頭痛、倦怠感な等です。
治療としては、基本じゃ食事療養や薬物療法です。むくみが強い場合は、利尿剤を使用して血液中の塩分、水分の排泄を促します。また、血圧の維持に努め症状の悪化を防ぎます。
《IgA腎症》
免疫グロブリンAは、のど、気管支、腸等の粘膜を外敵から守っています。この障壁が弱いと、粘膜に感染した病原体の一部とIgAが免疫複合体を作って血液中に入り、腎臓に流れ着きます。
腎臓の糸球体のフィルターにひっかかると、2~3か月かけてジワジワと炎症を起こして組織を破壊していきます。粘膜感染を繰り返すと腎臓にはどんどん免疫複合体がたまっていきます。IgA腎症では血液中のIgA濃度が高くなることがあります。IgA腎症は20代前半に発病のピークがありますが、10歳以下でも50歳以上でも発症することがあります。
原因としては、非常に多岐にわたり、十分な解明には至っていません。
症状としては、大部分は無症状で、健診や学校検尿における尿の異常で発見されることが大部分です。上気道炎、扁桃炎、腸炎(下痢、腹痛)等で38.0℃を越える高熱を伴うとき、コーラ色の肉眼的血尿発作が特徴的です。
また、日本では肉眼的血尿の症状で発見されるのは約10%でネフローゼ症候群(尿にタンパクが大量に漏れて浮腫をきたす状態)で発見されるのは5%以下とされています。
治療としては、原因が不明であるため、根本的な治療法は確立されていませんが、食事療法や薬物療法です。禁煙や適正飲酒量、適正体重の維持を心がけます。また、運動量の調節が必要な場合もあります。
食事療法では、塩分の摂取を制限します。腎機能が悪くなると、タンパク質の摂取を制限する場合もあり、必要に応じて、高圧薬、副腎皮質ステロイド、抗血小板薬等を服用します。
診断後、20年で約40%が末期腎不全に至るとされています。尿タンパク1g以上を放置すると10年でおよそ30%が慢性腎不全に移行するので、尿検査を定期的に必ず受けるようにしましょう。
《慢性腎臓病》
慢性腎臓病とは、(chronic kidney disease=CKD)慢性に経過するすべての腎臓病を指し新たな国民病とも言われています。CKDの原因には様々なものがありますが、生活習慣病(糖尿病、高血圧等)や慢性腎炎が代表的でメタボリックシンドロームとの関連も深く、誰もがかかる可能性のある病気です。
症状としては、CKDの初期は自覚症状がありません。病気が進行すると、夜間尿、貧血、倦怠感、むくみ、息切れ等の症状がでてきます。これらの症状が自覚されるときには、すでにCKDがかなり進行している場合が多いと言われています。体調の変化に気をつけているだけでは、早期発見は難しいのがこの病気の特徴です。
早期発見のためには、定期的な検査が有効です。腎臓の働きの指標はGFR(糸球体濾過量)で表されます。CKDはその原因や進行度に応じて治療を定め、管理していくことが可能です。
《記事のまとめ》
腎臓は機能を一度失われると、回復することがない場合が多いですが、近年では医療技術が進歩しています。
早期に治療を開始すれば、機能の低下を防いだり、遅らせたりすることが可能になりました。
腎機能の悪化を防ぐには、治療の継続が重要です。