カルテ、カルテというけど、どのことをカルテというか知っていますか?
診療に関する情報についてまとめました。
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《診療録とは?》

 

診療録とは、唯一法律で使用されている用語であり、正式な名称です。しかし、日本では、今だにカルテという用語が使用されているのも現状です。

カルテというのは、ドイツ語の「karte」という用語を慣習的に使用していたことにはじまります。カルテとは、紙切れという意味で、診療録という意味はありません。

ここで一度定義を確認しておきましょう。

 

《用語の定義》

 

診療録

 

法律上医師が作成を義務づけられている記録をいい、あくまでも医師が作成した記録であり、狭義の診療録と考えられます(医師法第24条、歯科医師法第23条)。

 

診療記録

 

診療録、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、X線写真、紹介状、退院した患者さんにかかる入院期間中の診療経過の要約(退院時要約、サマリー)、そのほか診療の過程で患者さんの身体状況、病状、治療などについて作成、記録または保存された書類、画像などの記録をいい、広義の診療録と考えられます。

 

診療情報

 

診療の過程で、患者さんの身体状況、病状、治療などについて、医療従事者が知り得た情報をいい、紙媒体、電子媒体にかかわらずすべての情報を含みます。

 

《診療記録の意義と価値(目的)とは?》

 

診療記録の価値について、病院管理学の創始者と言われるDr.macEachernは以下の6つの項目を挙げています。

 

  1. 患者にとっての価値(Value to the patient)
  2. 病院にとっての価値(Value to the hospital)
  3. 医師によっての価値(Value to the physician)
  4. 法的防衛上の価値(Value in legal defense)
  5. 公衆衛生上の価値(Value in public health)
  6. 医学研究上の価値(Value in medical reseach)
  7. 医療保険上の価値:日本とアメリカでは、保険制度が全く異なっており、日本独自の価値として「医療保険上の価値」がここに加わることになります。

 

 

《各価値(目的)の説明》

 

①患者によっての価値(Value to the patient)

 

診療記録は、医療従事者が適切な医療を提供するために、その過程を記録し、自らの医療業務の的確な管理を通じて適正な医療の提供に資するとことに最大の意義があります。

しかしながら一方では、医療従事者と患者が共同して疾病を克服する医療のあり方が求められている今日、医療内容を患者に対して示し、患者が自身の疾病の状態や治療内容などについて理解する患者のための資料としての意義も指摘できます。

医師にとって、前回の診療内容を確認する目的で使用され、チーム医療の情報伝達ツールとしての役割も重要です。

 

②病院にとっての価値(Value to the hospital)

 

適正な医療の安定的提供のためには、医療機関の適正な運営は極めて重要であり、この種の診療情報の活用は大きな意義を有しています。その病院に受診する患者の動向を把握することにより、ニーズにあった医療の提供やハード面、ソフト面での改善につながる資料となります。

 

③医師によっての価値(Value to the physician)

 

診療録は、医学生の教育や、医師の卒後教育においても重要な資料となります。自身の行った医療を検証し、分析することにより自身の治療成績を知ることが可能です。

 

④法的防衛上の価値(Value in legal defense)

 

医療過誤などの訴訟において裁判所は、診療記録について証拠として高い積極的評価を与えています。

また、医療訴訟においては、医療側の知識、情報が偏在し、診療録などの診療記録なしに患者側が医療側の過失の有無を立証することは非常に困難であることから、患者側が訴訟を遂行するにあたって不可欠の資料となっています。

 

⑤公衆衛生上の価値(Value in public health)

 

診療情報・診療記録の中には、行政上の調査・統計に際して、収集・作成されるものがあり、これらは、公衆衛生の向上などの行政目的のため活用されています。

 

⑥医学研究上の価値(Value in medical reseach)

 

診療情報・診療記録は、間接的にではありますが、医療従事者の教育・資料として活用され、医療水準の向上などに寄与しています。医療研究上の価値は即時的ではなく、時間を経て患者へのフィードバックされる性質のものです。つまり、過去の多くの症例などが未来の患者へ還元されるということです。

 

また、近年は、医療の提供に際し、根拠に基づいた医療(Evidence Based Medicine=EBM)が求められてきています。EBMとは、免学などの研究成果や実証的、実用的な根拠を用いて、効果的で質の高い患者中心の医療を実践するための事前ならびに事後評価の手技、手段です。EBM実践のための基礎となるのが診療記録となります。

 

⑦医療保険上の価値

 

診療記録は、医療保険上給付内容を特定するための資料として、国民皆保険制度の維持に不可欠なものとなっています。

 

保険診療を行う病院は、「保険医療機関および保険医療養担当規則」を遵守し診療を行い、診療報酬請求を行うこととなります。行った医療行為については、診療録に記載し、保存しておかなければ支払いの対象にならない場合もあります。その請求の根拠となるのが診療録となります。

 

 

《記事のまとめ》

 

診療録は、様々な場面で使用されるのであり、訴訟などの際にも医療側の過失の有無を立証するための資料として使用されます。

医師事務として業務を行う際には、その点も念頭にいれて行うようにしましょう。

 

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