重症の場合は、足の切断の可能性も?!

閉塞性動脈硬化症についてまとめました。

スポンサーリンク

《閉塞性動脈硬化症とは?》

閉塞性動脈硬化症とは、ASOともいい(Arterio-sclerosis Obliteransの略)、手や足(主に足)の血管に動脈硬化が起こり、血管が狭くなったり、血管が詰まるかして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気です。

 

《閉塞性動脈硬化症の症状は?》

冷感、しびれ:手足が冷たい、手足がしびれる、手足の指が青白い

間欠性跛行:一定の距離を歩くと、主にふくらはぎやおしり、太ももなどが締めつけられるように痛くなり、休まなければならない(数分で回復)、階段を登るのは特につらい。

※間歇性とは、間隔をおいて、起きたり、起きなかったりすることで、跛行とは、びっこを引くという意味で、間歇性跛行は、歩くことで起きたりやんだりする歩行障害のことです。

安静時疼痛:じっとしていても手足が痛み、夜もよく眠れない、刺すような痛みが常に持続している

潰瘍、壊死:手足に治りにくい潰瘍ができる、壊死部は黒くなる

 

《閉塞性動脈硬化症の危険因子》

閉塞性動脈硬化症の下地となり、悪化させる危険因子は、喫煙、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、慢性腎不全などがあります。喫煙者が閉塞性動脈硬化症になると、非喫煙者に比べ、間歇性跛行が生じる割合が約3倍も高まるといわれています。また、糖尿病の場合は、重症化しやすく、治療のため足を切断する率も高まるといわれています。

 

《閉塞性動脈硬化症の検査にはどんなものがある?》

ABI(足関節上腕血圧比)

ABIは、ABI=ankle-brachial pressure indexの略で、足関節の収縮期血圧を上腕の収縮期血圧で割った値で、この値が低い場合、心臓と足関節との間の動脈が狭くなっているか、または閉塞性動脈硬化症が起きている可能性が高いことを示します。

ABIが1.0以上の場合は正常ですが、0.9以下であれば、足の動脈に病変があると断定できます。この数値が低いほど重症です。ただし、糖尿病や慢性腎不全(特に透析をしている場合)では、ABIが1.0以上であっても必ずしも正常だとはいえませんので、注意を要します。

ABI = 足関節の収縮期血圧 ÷ 上肢の収縮期血圧

現在、自動ABI測定器が普及し早期診断に役立っていますが、より正確に診断するには、超音波をあてて測定するドプラ血流計で、動脈(後脛骨動脈と足背動脈)の流れ具合を測定してから、ABIを計測することが望ましいと考えられています。

 

血管エコー検査

超音波をあてて血管の太さや狭窄、閉塞がないか調べます。

運動負荷試験

運動をしてもらいながら行う検査です。この検査の特徴は、運動前後のABIの変化、どれくらいの歩行距離で歩行障害(跛行)が起きるか、その程度はどれくらいかなどから血流不足の重症度を客観的に調べることができます。

動脈造影検査、CTアンギオグラフィ、MRアンギオグラフィ

カテーテルでヨードの入った造影剤を注入し、エックス線をあてて動脈の形態を調べる動脈造影検査は、閉塞性動脈硬化症の確定診断に欠かせない大切な検査です。しかし、ごくまれに重度の合併症が起こる場合があり、近年ではCTやMRIの装置を使うCTアンギオグラフィや、MRアンギオグラフィが活用されています。

CTの方は、高速で広範囲にわたり、判別能力の高い画像が得られるのが特徴です。ただし、この検査は、ヨードおよびヨード造影剤アレルギーや慢性腎不全の場合には行うことができません。

MRの方は、放射線も造影剤も使わずに、血管の様子を描きだすのが特徴です。ただし、強い磁場を使うので、ペースメーカや除細動器を埋め込んでいる場合や人工内耳を埋め込んでいる場合などには、原則としてこの検査は行うことができません。

また、閉塞性動脈硬化症では、動脈硬化に関連する他の病気を合併していることがあります。そのため、糖尿病や高血圧、高脂血症などの検査を行うこともあります。

 

《閉塞性動脈硬化症の重症度》

閉塞性動脈硬化症の重症度は以下のように分類されています。

Ⅰ:無症状となっていますが、人によっては冷感、しびれ感などの症状から始まります。

Ⅱa:軽度跛行

Ⅱb:中等度跛行から重症跛行

Ⅲ:安静にしていても足が痛い(安静時疼痛)という状況で、ここから先は重症虚血肢といわれ重症な分類に入ります。

Ⅳ:足に潰瘍や壊疽ができ、最終的に足を切断せざるを得ない場合があります。

 

《閉塞性動脈硬化症の治療法》

閉塞性動脈硬化症は、足への血流不足によって運動が制限されるので、生活の質(QOL=Quality of lifeの略)は低下します。閉塞性動脈硬化症の治療法は重症度によって異なります。

Ⅰ度には、動脈硬化危険因子の管理(禁煙も含む)および薬物療法、Ⅱ度には、薬物療法に加えて運動療法を行い、血流をよくする血行再建術が必要かどうか検討します。

ⅢまたはⅣ度の場合、積極的に血行再建術を行うよう検討し、これができないときは、新しい血管をつくりだす血管新生療法も検討します。

 

禁煙

禁煙は予防・治療の大原則です。ただし、禁煙によって足の症状が改善するという明確な根拠はなく、あくまでも進行を遅らせ、下肢切断を回避するのが目的です。

薬物療法

薬物療法は足へ向かう血流を増やして症状を改善する一方、心臓や脳の血流もよくすることを目的として、抗血小板薬や血管拡張薬がよく使われています。主なものはアスピリン、シロスタゾール、チクロピジン、ベラプロスト、サルボグラレート、リマプロスト、エイコサペンタエン酸などです。抗血小板薬の投与で、虚血性心臓病(心筋梗塞、狭心症)や脳梗塞の発症は減るとされているので、他の血管疾患をチェックしたうえで、積極的に心臓・脳血管疾患の予防に努めることも大切です。

炭酸泉療法

炭酸泉療法は、人工炭酸泉発生装置で、37℃の温水中に濃度1000ppm以上の炭酸ガスを発生させ、その中に足を10〜15分間つける、つまり足浴する温泉療法の一つです。特に重症下肢虚血の場合に行われています。皮膚に浸透した炭酸ガスが直接、皮下の微小血管を拡張させたり、交感神経活動を抑制したりして末梢血管の循環をよくするとされています。

運動療法

初期治療として、まず行われるのが運動療法です。血液不足の足への血流を増やす一方、血液中の酸素の利用効率を高めます。運動療法は、1回30分程度、1日2回で毎日行うのが理想的です。最低でも1日30分、週3回は行うように心掛けましょう。

歩行で足の痛みが中等度になった時点で、歩行を中断し、休憩します。痛みがなくなれば、歩行を再開します。再び中等度の痛みを感じるようになったら中断し、休憩するを繰り返し行います。運動の強さは、歩行状態を確かめながら、適宜、調整していきます。身体的問題がない限り、積極的、定期的に運動を続け、運動を習慣化してください。

血行再建術(カテーテル治療、バイパス手術)

血行をよくするのが血行再建術で、運動療法や薬物療法で十分な効果が得られなかった場合に行われます。カテーテル治療とバイパス手術があります。

カテーテル治療:動脈が狭くなったり、詰まったりした個所に、カテーテルを入れて操作し、血行をよくするか、もしくはカテーテルを通じてステント(金網を円筒にした人工血管)を動脈内に導き、狭くなったり閉塞したりした部分に固定して、血行をよくするのが、カテーテル治療です。

バイパス手術:狭くなったり詰まったりした個所に、カラダのほかの部分から切り取った血管または人工血管をバイパスとして取り付け、血流を確保する方法です。カテーテル治療に比べ、患者さんの身体的負担は大きいのですが、動脈の場所によっては有利な場合もあるので、どちらの方法がよいかを決定します。

血管新生療法

新しい血管をつくりだし、足の血流不足を補うのが目的で、薬物療法が効かない、血行再建術のできない場合に検討される方法です。現在、この治療法として自身の骨髄、または血液中の単核球の移植が、先進医療として認可されています。

 

《日常生活での注意点》

・不規則な生活を改善して、ストレスを溜めない生活をしましょう。

・足の血流が悪くなると、皮膚へ届く栄養が不十分になり、足の皮膚が弱くなります。足に傷がつきやすく、治りにくくなるので、足の状態のチェックとケアが大切です。また、深爪にならないように爪のケアにも注意し足を清潔に保ちましょう。

・手足を冷やさないように保温に気をつけることも大切です。お風呂やこたつ、電気カーペットなどもやけどの原因になるので、温度を注意するか部屋全体を暖める暖房器具を使いましょう。

・長期時間の起立や正座、しゃがみ込んだ姿勢は血管に負担がかかり、病状や症状が悪化する場合があるので避けるようにしましょう。

 

《記事のまとめ》

閉塞性動脈硬化症と分かったら、他の血管の病気がないか確認することが大切です。

早期発見、早期治療で生活の質を保つことができます。

スポンサーリンク
おすすめの記事