なんで誕生したの?変化はあったの?
目次
《医師事務作業補助体制加算の誕生》
日本の医療を取り巻く環境はさまざまな問題を抱えています。その中でも、医師不足や医師の過重労働は、医療の質の低下にも繋がり、医療崩壊という生活の基盤を揺るがす深刻な事態に進みつつあります。そこで、医療職が専門性を要する業務に専念できるよう、医師の事務的業務を補助することを目的に、平成20年の診療報酬改定で医師事務作業補助体制加算が誕生しました。
《医師ってそんなに忙しい?》
医師は医療を行う上で先頭に立ち、他の医療職に対し指示を行わなければなりません。また、緊急の対応が山ほど覆いかぶさり、手間がとられることが多く、他の医療職では行えないものがほとんどです。今回は、ある日の外科医のスケジュール見てみましょう。
■ある日の外科医のスケジュール その1
■ある日の外科医のスケジュール その2
■ある日の外科医のスケジュールその3
ご覧のとおり、外来診療を行っていても、病棟からの急変の対応依頼や指示の確認の連絡が入り、飛び込みの業務が発生していることが分かります。その他にも栄養、リハビリの指示の確認や処置の依頼、他の医師からの診察依頼などその内容は多岐にわたります。
手術にしても、1時間以内に終わるものから8~9時間と1日の業務時間をすべて手術に費やすこともあり残務が発生してしまいます。
《医師の業務をどうにか減らすことはできないの?》
医師の業務は、大きく直接的業務と間接的業務に分けられ、直接的業務の中でも医師でなければ行えない絶対的業務と、医師の指示があれば他の医療職が行える相対的業務があります。
相対的業務を他の医療職に委譲した場合、残る間接的業務を誰に委譲するのかという問題が発生します。
そこで、医師の事務的業務を補助することを目的に医師事務作業補助体制加算が誕生したというのです。
間接的業務の内容
診療録の記載、医療文書の作成、電子カルテ・オーダリングシステムの入力、検査結果の物的整理、レセプトに添付する症状詳記の作成など
《医師事務作業補助体制加算の変遷》
平成20年に医師事務作業補助体制加算が新設され今年で10年となります。その間、どのような変化があったのか、以下のグラフで表してみました。
- 平成22年:15対1、20対1が新設された
- 平成24年:30対1、40対1が新設された
- 平成26年:従来の医師事務作業補助体制加算を2として、新たに医師事務作業補助体制加算1が新設された(体制加算2の要件と異なる点:勤務時間の8割以上を病棟または外来で行う)
- 平成28年:算定要件の緩和、特定機能病院(一般・精神・療養)でも体制加算1に限り算定可能となった。
- 平成30年: 点数の引き上げ
診療報酬の削減が叫ばれているなか、算定要件の緩和や点数の引き上げなどが行われており、着実に医師事務作業補助体制加算の評価が上がってきているのが分かります。
《記事のまとめ》
事務は縁の下の力持ちといわれ、なかなか表舞台に立つことはできませんでした。
しかし、医師事務作業補助体制加算が誕生し、チーム医療の一員として貢献することができ、その様子は大きく変わろうとしています。
病院にとってなくなはならない存在となれるよう、日々の積み重ねを大切にしていきたいですね。