以前はできていたことができなくなった。これって病気?

高次脳機能障害についてまとめました。

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《高次脳機能障害とは?》

高次脳機能障害とは、交通事故や転倒などによって脳の一部が損傷を受け、記憶、思考、判断など高度な脳の働きを失うことをいいます。高次脳機能障害は症状が目立たないため、障害があることを本人や周りの人が気付くまでに時間がかかる傾向があります。

 

《高次脳機能障害の症状》

高次脳機能障害によって起こされるさまざまな症状は多岐にわたり、注意障害、記憶障害、失語識障害、失行識障害、見当識障害、感情障害などがあり、脳の損傷部位によって特徴が出ます。

注意障害

交通事故で脳に損傷を受けた場合にも発症することがあります。集中力が低下し、仕事や勉強を長く続けることが困難になったり、外見的にもぼんやりすることが多くなったり、周囲が呼びかけても返事をしないなどの変化がみられます。また、同時に2つ以上のことが出来ない、考えられないなどの症状もみられます。症状によって、以下の4種類の注意障害に分類されます。

全般性注意障害

全般性注意障害とは、注意機能が全般的に低下する場合をいい、
注意の持続、維持が困難になります。言語、記憶、思考などへの統制が低下し、会話や思考が断片的でまとまらなくなり、行動に一貫性がなくなります。また、記憶や判断の誤りが生じ、錯覚や幻覚などを伴うこともあります。

容量性注意障害

容量性注意障害では、一度に処理できる情報量が低下します。情報の処理効率が悪くなり、同時に複数のことを処理するのが困難になります。容量性注意障害では、日常生活において短い会話は理解できても、長い会話になると理解がしづらくなったり、混乱したりします。また、桁数の少ない暗算は可能ですが、桁数が多くなるとできなくなります。作業をする際、ひとつなら問題なくこなせても、複数を同時にしなければならなくなると、途端にできなくなり失敗が増えます。

持続性注意障害

持続性注意障害では、注意を持続的に集中することが困難になります。障害が軽度の場合には、比較的短時間の集中は可能ではあるものの、長時間にわたり注意を集中し続けることはできなくなります。特徴的な症状として、運動障害がないにもかかわらず、口を開け続けたり、声を出し続けたりするなどの単純な運動や動作を持続してできなくなります。これは運動や動作の維持に対する注意が続かないことにより起こります。

選択性注意障害

選択性注意障害とは、関係のない刺激に対して注意を奪われやすくなり、目的をもった注意の方向づけが困難になる状態をいいます。仕事や作業をしているときも、他で物音や話し声が聞こえるとそちらに注意がそれてしまい、落ち着きがなくなり作業に支障をきたします。また、さまざまな事象から必要な対象を選択することが困難になり、多くのものの中から必要なものを選び出すことができなくなったりします。他の音や話し声が周囲にあるところでは、相手の会話を選択して聞き取ることが難しく会話を理解しにくくなったりします。

記憶障害

記憶全般に関して発症するさまざまな障害のことをまとめて記憶障害といいます。新しい記憶の蓄積ができなくなっていったり、覚えたはずなのにすぐに忘れてしまったり、過去の記憶や、知っているはずの人や物の名前が思い出せなくなるなどの症状があります。

短期記憶

記憶の貯蔵時間が数十秒以内とされており、脳に入ってきた新しい情報を覚えられない状態になります。何かを見たり、聞いたりしてもすぐに忘れてしまうので、日常生活はもちろん、仕事をする上でも非常に困難が伴います。

長期記憶

陳述記憶(宣言的、顕在的):過去から現在までの記憶で、意識的に思い出したり、他人に語ることができる記憶のことです。経験によって蓄積されるエピソード記憶と、学習によって得た知識の意味記憶の2つに分けられます。

非陳述記憶(非宣言的、替在的):本人が繰り返しの練習によって体得した技術的な動作や、経験に基づいた潜在的な記憶など、言葉では説明できない記憶のことです。刺激による条件反射もこれにあたります。

失語識障害

失語症とは、脳の損傷により起こる言語障害のひとつです。大脳の言語機能を司る言語領域が障害を受けることで、聴く、話す、読む、書くという言語障害が現れます。失語症になると、それまで意識せずに行っていた他者とのコミュニケーションが困難となり、日常生活上支障を来たすようになります。

失行識障害

失行症になると、四肢の障害がないにもかかわらず、服を着る、食事をするなど以前は容易にこなせていた日常生活での動作において困難と感じる状態になります。物品や道具を不器用に使用したり、誤って扱うなどの行為をする場合には失行症が考えられます。

見当識障害

見当識とは、時間、場所、人物や周囲の状況を正しく認識することをいいます。見当識が障害されると、日時や季節がわからない、いま自分がいる場所が分からない、あるいは家族が分からないというような症状が現れます。

感情障害

感情障害とは、脳の損傷により行動や感情・情動の障害を来すことがあります。行動障害と情動障害に分かれます。

行動障害

突然きっかけもなく怒りだし、暴力的な、また子供じみた衝動的な行動を起こします。衝動的行為は短時間で終わり、本人は覚えていないこともあります。また、話す内容が、場にそぐわない不適切なものであったり、性的な羞恥心がなくなるなどの社会活動の障害、人格変化などを認めます。

情動障害

突然に怒り出す、他人に対して攻撃する、指摘しないと自分からは何もしない、まわりとうまく交流できない、約束を守らず実行しない、落ち着きがない、感情の起伏が激しく自分で制御できない、ちょっとしたことで気持ちが動揺する、急に泣いたり、怒ったりする、気持ちが沈みがちでふさぎこむ、やる気が出ない、家から出ようとしないなどの症状があります。

 

《高次脳機能障害の治療法》

高次脳機能障害は、手術治療や内服治療、点滴治療といった確立した治療方法がありません。社会復帰を目指してリハビリテーションを行うことが中心となります。

一度低下してしまった高次脳機能は徐々に改善していきます。多くの場合、発症後、1年程度の時期までは著しい改善がみられます。その後は、改善のスピードが鈍り、発症後2年程度経過するとほぼ症状が固定してしまうといわれています。なので早期に適切なリハビリテーションを行うことが重要となり、社会復帰の近道になります。また、認知機能そのものの改善が困難な場合でも、代償手段を利用する事でできることの範囲を広げていくことは可能です。何年もかけて少しずつ日常生活や社会生活への適応範囲を拡大させていかれるケースもあります。

《記事のまとめ》

高次脳機能障害にはさまざまな症状があり、その対処方法もさまざまです。また、なかなか気づきにくい病気であるため、周りの人達のサポートが必要になります。治療に関しては、本人が楽しく、興味をもって行えるよう工夫をすることが必要です。

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