おしりが痛かったり、違和感があるけど誰にも相談づらいし、病院にいっておしりを見せるもの恥ずかしい・・
そんなおしりに関する病気についてまとめました。
《おしりの役割》
おしり(肛門 正式には肛門管)は直腸(大腸)から続き、溜まった便を体外へと送り出す働きをしています。
肛門は内側の内肛門括約筋、外側の外肛門括約筋の2種類の筋肉からできています。内肛門括約筋は腸の筋肉の一部で、平滑筋という自律神経がコントロールする筋肉です。なので、おしりを締めようと意識しなくても、自律神経のはたらきでおしりを締めてくれます。
この働きによって、普段まったく意識していなくても、便やガスが勝手に外に漏れてしまうことがありません。しかし、ひどい下痢で便が水のようになったときは、肛門をすり抜けて漏れてしまうこともあります。そして外肛門括約筋は、体性神経支配の横紋筋です。
手や足の骨格筋と一緒で、自分で意識して締めることができます。内肛門括約筋は普段、無意識に肛門を閉じてくれていますが、肛門の近くまで便がくると緩んでしまいます。その時に便意を感じることができるので、便が漏れないように、外肛門括約筋を締めることができます。
このように肛門の締まりは平滑筋と横紋筋で調整されています。また、直腸と肛門の境目は、粘膜が歯のように入り組んだ格好をしているため、歯状線といわれています。直腸は自律神経によって支配されているため、痛みを感じる神経はありません。
そのため直腸になにか異常があっても、出血等があるだけで、痛みは伴いません。
しかし、肛門は、痛みにはかなり敏感です。そのため、直腸側にできた内痔核や腫瘍ならば痛みがありませんが、肛門にできた外痔核や裂肛(切れ痔)、腫瘍には強い痛みが伴うことが多いです。
《痔》
痔には痔核、裂肛、痔瘻と3種類あります。
まず、痔核はいぼ痔ともいわれ、内痔核と外痔核にわけられています。内痔核は直腸の下や肛門にある静脈を含めて肛門を閉じる役割をするクッション部分がうっ血してふくらんだもの。この痔核が歯状線より内側にできたものをいいます。
外痔核は肛門の歯状線より外側にできたものをいいます。肛門の外側に血まめができた状態のものを血栓性外痔核といいます。内痔核はその腫れ方の程度により、4つに分類されます。
1度は肛門管内にとどまっている段階、2度は腫れが強くなり、排便時に外へ脱出するが自然にまた元へ戻る段階。3度になると排便時にいったん飛び出すと、指で押し戻さないと腫れが引かない段階。この腫れがさらにひどくなると、飛び出したままで押し戻すことができない段階(脱肛)、4度となります。
症状としては、内痔核は痛みはほとんどなく、排便時に出血したり、肛門から脱出して気がつくケースが多いようです。肛門から脱出したときには、肛門から飛び出してくる感じや異物感があります。初期の段階では排便が終わると自然と元に戻りますが、進行すると常に痔核が脱出していて指で戻さないと戻らない状態となります。
外痔核は出血は少ないですが、腫れて激しく痛むことが多いです。
原因としては内痔核は便秘やトイレ時間が長くて排便時のいきみが強い、長時間同じ姿勢をとる、妊娠や出産がきっかけで起こりやすくなります。外痔核は便秘や下痢、アルコールや辛いものの摂り過ぎ、長時間歩き回ることや座りっぱなしのことが多い、冷え、ストレス等で起こりやすくなります。
治療としては、薬物治療と手術治療があります。内痔核の手術治療としてメスを入れて切り取る観血療法と切らずに治す非観血療法があります。
次は、裂肛です。裂肛は切れ痔ともいわれ、肛門の皮膚が切れたり裂けた状態のことをいいます。症状としては排便時に激しい痛みと出血があり、裂肛を繰り返すと、裂け目が深くなって炎症が起き、潰瘍やポリープ、肛門が狭くなってしまいます。便秘等によって、便を無理に出そうとしてその刺激で切れることが多く女性に多くみられます。また、慢性的な下痢による炎症として起こることもあります。
治療としては裂肛が急性か慢性かで大きく違います。急性裂肛は手術の必要はなく薬物治療で治ります。しかし、薬物治療よりも食生活や排便習慣の改善が重要です。アルコールや刺激物をたくさん摂り過ぎないようにし、おしりを冷やしたり同じ姿勢を長時間とったり、トイレを我慢したりしないように気をつけましょう。慢性裂肛は狭窄があり排便後の痛みが強かったり、肛門ポリープ、皮垂が大きい、痔瘻等の他の合併がある際には手術が必要となります。
最後に、痔瘻です。痔瘻はあな痔ともいわれ、歯状線にあるくぼみに大腸菌などが感染すると、炎症が起こり、化膿して膿がたまります。この段階では、まだ肛門周囲膿瘍と呼ばれますが、この症状が繰り返されることによって、細菌の入り口と膿が皮膚を破って流れ出る部分まで 1本のトンネルのように貫通したものを痔瘻といいます。
症状としては出血することはあまりなく、肛門の周囲の皮膚が腫れて痛みを伴い、熱が出ることもあります。原因としては下痢やストレスによる免疫力の低下で、男性にやや多くみられています。また、肛門周囲膿瘍で手術等で膿が出た後にその口が塞がらず膿が出続けることが多いとされ、炎症性疾患のクローン病でもよく痔瘻を伴います。
その膿が溜まるスペースによって分類がわかれており、1型は皮下または粘膜下で裂肛や肛門手術が原因とされています。2型は筋間で痔瘻の大半を占め、トンネルの出口の2次口(おしり外側)が歯状線より下へのびる低位(L)と高位(H)に分かれます。3型は坐骨直腸窩で後方に原発口がありトンネルが肛門周囲の後方部分の脂肪組織内深くを走るもので片側(U)と両側(B)に分かれます。中には複雑化し2次口を2つ以上となることがります。4型は骨盤直腸窩で稀ではありますが、坐骨直腸窩よりさらに上へ伸びたトンネルが肛門挙筋の上まで伸びているものをいいます。
治療としては手術治療です。瘻管を開いたり、切除、くりぬく方法等さまざまです。痔瘻の形や広がり方、肛門からの距離、深さ等で選択されています。また、何らかの原因で治療を受けずに10年以上経過した痔瘻から悪性細胞が出てしまい痔瘻がんとなってしまうこともあります。そうなってしまうと、手術は患部を皮膚とともに切除し、人工肛門となってしまいます。
《直腸脱》
脱肛が内痔核の脱出であるのに対し、直腸が脱出する病気で、ほとんどが高齢の女性に起きます。女性では同時に子宮脱も伴うこともあります。
その脱出の程度に応じて不完全直腸脱(直腸粘膜のみの脱出)と完全直腸脱(直腸全層の脱出)に分類されます。症状としては初期では、排便時のみの脱出ですが、進行してくると立っているだけで肛門が腫れてきます。排便後に手で押し込まないといつまでも腫れや痛みが続き、下着に触れて出血するようになります。
原因としては直腸は肛門挙筋により骨盤から下へ下がらないように支えられています。この支持が失われると、肛門や直腸が本来の位置から下がってくるのです。なので出産により骨盤底の筋肉が弱くなったり、外肛門括約筋が弱い、腹腔内の直腸子宮間のポケットが深い、直腸が短い等があります。
また、直腸ポリープや内痔核脱肛等、脱出する病気を放置することも原因の一つです。治療としては手術治療です。手術の方法としては経腹的(直腸の上から持ち上げる)と経肛門的(直腸を下から押し戻す)があります。現在、経腹的では腹腔鏡を用いて行われることが多くなってきています。
《記事のまとめ》
痔といってもその種類はたくさんあり、いつか治るだろうと放っておくのはよくありません。地主さんは土地を管理しているように、痔主さんも自分自身を管理してあげてください。