勤務医負担軽減のための医師事務作業補助。
医師事務を配置することによって点数がとれる?条件は?
私が経験した算定開始までの流れを説明します。
《医師事務作業補助体制加算》
まず、医師事務作業補助体制加算とは、
施設基準を満たし当該患者の入院初日に限り算定できます。その点数は、届け出を行った病床数に対して何人の医師事務が配置されているかで点数が異なっていたり業務を行う場所によって異なっていたりします。
施設基準ですが、各医療機関で策定した勤務医負担軽減策を(役割分担推進のための委員会や会議の開催、現状の勤務状況等を把握し、問題点を抽出したうえで、具体的な取り組み内容、処遇の改善等)踏まえ、医師事務作業補助者を適切に配置し、その業務を管理・改善するための責任者を置くこととされています。
その当該責任者は、適宜勤務医の意見を取り入れ、医師事務の配置状況や業務内容等について見直しを行い、勤務医の事務作業の軽減に資する体制を確保することに努めなければなりません。
また、当該責任者は、医師事務作業補助を新たに配置してから6ヶ月間は研修期間として、業務内容について必要な研修を行うこととされています。(業務を行いながらの職場研修を含む)6ヶ月の研修期間内に32時間以上の研修を実施するものとされており、
その研修内容は、
ア.医師法、医療法、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律、健康保険法等の関連法規の概要、イ.個人情報の保護に関する事項、ウ.当該医療機関で提供される一般的な医療内容及び各配置部門における医療内容や用語等、エ.診療録等の記載・管理及び代筆、代行入力、オ.電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む)です。
あとは、救急搬送により緊急入院した等の年間緊急入院患者数や全身麻酔による年間手術件数等があります。
また、この加算を算定する医師事務は、
医師以外の職種の指示の下に行う業務、診療報酬の請求業務(DPCのコーディングに係る業務を含む)、窓口・受付業務、医療機関の経営、運営のためのデータ収集業務、看護業務の補助並びに物品運搬業務等は行ってはいけません。
《算定開始までに行ったこと》
まず、各部署の研修から始まりました。
病院で働くのが初めてだったこともあり、院内薬局や中央材料室、検査室での研修はとても刺激的でした。ただ業務内容の説明だけでなく器械や材料の滅菌等、実際に行っている業務を体験しました。
各部署の研修日数はそれぞれ違っていましたが、約1ヶ月かけて研修を行った記憶があります。その後は、責任者の指導の元、入院手術証明書や主治医意見書等の医療文書の作成に入りました。それと同時に、医師のスケジュール管理や専門医関連、外科症例登録(NCD)等も開始していきました。
6ヶ月間の研修期間は日常業務を行いながらの職場研修も含まれているので、前述した業務内容を継続していきました。しかし、6ヶ月の研修期間内に32時間以上の研修を行わなければなりません。その研修は医療法をはじめ研修内容が決まっています。
院内でその内容の研修を行える医療機関はいいですが、私のところでは院内で研修を行うことは難しかったので、外部研修に参加しました。
外部研修では、2日間、9:00~18:00みっちりと各項目についての講義を受けたり演習問題をといていきました。外部研修を受けたら終わりではなく、帰ってきてから約1ヶ月以内にレポートを作成しなければいけません。
レポートの内容は、医療機関の施設基準や院内組織、院内規程等の病院内研修レポート、担当診療科の文書作成サポート、電子カルテ、オーダリングシステム等の業務関連レポートです。その研修レポートを医療機関の管理者に検認していただいた後、研修の主催事務局に提出します。提出後、1ヶ月もしないうちに受講修了証が届きました。
《研修期間に苦労したこと》
まずは、2日間の外部研修です。
各項目30~60分ぐらいの講義ですが、その資料だけでも500ページはあるため講義のスピードがとても早かったです。ポイント等の説明もあるので聞き逃さないように必死で、アンダーラインや付箋をひたすら貼っていました。
なので、その場で理解するというのは難しかったり、省略されたりもするので、自宅に帰ってから全ページの復習が必要です。この外部研修は各地で開催されているわけではないので長距離の移動もあり自宅に帰ったらドッと疲れが襲ってきたのを覚えています。
その後は、医療機関の施設基準や院内組織、院内規程等の病院内研修レポートに取り掛かりました。例えば、初来院患者の受付は誰が行っているか、カルテの整理・保管は誰が行っているか等、院内の役割分担の把握も行いました。外部研修に行く前に各部署の研修があったため、役割分担の把握は比較的スムーズでしたが、医療機関の施設基準に時間を要しました。
それは、ただ届け出をしている項目だけを確認するのではなく、なぜ届け出しているのか、届け出できたのかも調べるようにと責任者からの指導があったので、診療報酬点数早見表で調べながら確認しました。
他には、業務手順の決定です。医師事務が配置されるまでは、専門医関連に関することは医師が行い、スケジュール管理は行われていなかったり、医療文書は医事課職員、カルテへの検査結果貼付は看護師が行っていました。
なので、医師事務が配置されたと同時に業務が移行され今まで通りの手順では効率が悪いものあったりしたので大幅な手順の見直しを行いました。責任者と共に各業務を担当していた方に話を聞き、最終的にどのようなかたちで終了すればいいのか、手順をかえることによって影響はないか等を検討しました。
検討して実際に業務を開始しましたが、不具合があったり業務移行が全体に周知されていなかったり、スケジュールの連絡がうまくいかなかったりして元の手順に戻したり、新たに手順を考えたりしました。
《算定開始してから》
無事に6ヵ月間の研修期間も終了し算定開始となりました。
様々な業務を他部署から移行したことにより、医師のことなら医師事務に頼めばいい!と思われるようにはなりましたが、医師事務作業補助体制加算を算定しているからには行ってはいけない業務があります。
他部署に説明はしているもののなかなか浸透していきませんでした。病棟で業務を行っていたら、これもやって〜と看護師から頼まれることもありました。そんな時は、「責任者が医師事務の業務内容を把握してないといけないので〜」等とご機嫌を損なわないように、責任者に業務依頼してもらうように説明しました。
看護師ならそのような説明で大丈夫でしたが、医師はそれではうまくはいきません。ましてや医師の指示のもとに行う医師事務なので、医師にやってと言われたら断るのは難しいです。
そんな時は、どのようなことをしてほしいのか具体的に聞き、
やりたくないって言ってるんじゃないよ〜
とアピールして「責任者と相談してみます」と返事をしていました。医師事務は医師とのコミュニケーションが業務を進めていくのにとても重要です。
この時に、やりたくないから責任者と相談しますと言って断ってるんだなと思われてしまったら・・その後のコミュニケーションなんてとれるわけがないですよね。
《記事のまとめ》
6ヶ月の研修期間はとても長く感じました。しかし、たくさんのことを吸収できた6ヶ月間でもありました。
32時間の研修は必須項目となるため、確実に行ってください。
私のところでは、研修が全部終わってから算定開始となりましたが、研修計画がある状態での届出も可能です。
しかし、適時調査の際に確実に確認される項目なので研修を行っていないままの状態であったら、返還命令となるので注意が必要です。