肺炎は、日本での死因の上位にくる病気です。
肺炎についてまとめました。
目次
《肺炎って?》
肺炎とは、細菌やウイルスなどが鼻や口から侵入し、のどを経由して肺の中に入り込みます。健康な人は、この細菌やウイルスをのどでブロック出来ますが、風邪をひいていたり免疫力が落ちている時は、細菌やウイルスがのどや気管を通りぬけて肺まで侵入し、炎症を起こします。この状態を肺炎といいます。
《肺炎の種類にはどんなのがある?》
一言で肺炎といっても、原因となる病原微生物が違っていれば、治療法も異なります。肺炎の種類は大きく3つに分かれています。いずれも、感染の経路としては、発症している人の咳に含まれる病原微生物が、口や鼻から入り込んで感染する飛沫感染と、ドアノブなどに付着した病原微生物が自分の手指を経由して口や鼻からカラダの中に入り込んで感染する接触感染があります。一般的には、肺炎や風邪などの感染は、飛沫感染であることが多いです。
細菌性肺炎
肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、黄色ブドウ球菌などの細菌が原因で起こります。この中で肺炎球菌は最も肺炎の原因となることが多い微生物です。主な症状は、発熱、咳、痰(鉄のような色がつくことがあります)、息苦しさです。肺炎球菌性肺炎では、レントゲンやCTの画像にも特徴があり、肺の広範囲が炎症に冒されるため、画像検査では肺の広範囲に白い影ができます。
ウイルス性肺炎
インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、水痘ウイルスなどさまざまなウイルスが原因で起こります。主な症状は、一般的なかぜ症状に続き、激しい咳、高熱、倦怠感などの症状が出てきます。
非特定型肺炎
マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなど細菌とウイルスの中間的な性質を持つ微生物が原因で起こります。主な症状は、乾いた咳が長く続く(痰は少ない)ことが多いです。
《病原微生物にどこで感染したかで種類が違います》
肺炎は、感染する環境でも種類が分けられています。
市中肺炎
自宅などを拠点として日常生活を送っている人が、病院などの外で病原微生物に感染し、発症した肺炎です。ただの風邪だと思っていたら、いつの間にか重症化して、肺炎を発症することもあります。特にインフルエンザが流行する時期は、インフルエンザウイルスが原因となる肺炎が多くみられるので、予防接種をしっかり受けておくことが必要です。また、多くの場合、早めに適切な治療を行うことで完治します。
院内肺炎
何らかの病気のために病院などに入院して48時間以降に発症する肺炎です。特に抵抗力(免疫力)が低下している高齢者に多くみられ、気づいた時にはすでに重症化していたり、呼吸機能が改善しないまま死に至ることもあります。市中肺炎に比べて、予防や治療が難しいです。
一般的には、自宅で日常生活を送る中で、病原微生物に感染し、肺炎を発症する市中肺炎が多いようです。しかし、高齢者になるとちょっとしたきっかけで入院した時に、感染することもあります。
《肺炎の重症度》
治療方針を決定する上で重症度を把握することは重要なことです。肺炎の炎症によって全身状態がどれくらい悪いか、スコアをつけていくことで重症度を判断します。このスコアを、A‐DROPといいます。
A(Age 年齢):男性70歳以上、女性75歳以上
高齢者であると免疫力が低下します。実際に高齢者の肺炎は死因としても高いため、年齢が高いだけでリスクファクターになります。
D(Dehydration 脱水):BUN 21mg/dl以上または脱水あり
BUNは脱水の指標です。食事が摂れなくて水分量が低下していると、栄養状態も悪くなります。
R(Respiration 呼吸):SpO2 90%以下(PaO2 60torr以下)
SpO2は体の酸素量を測定する機械です。肺炎で肺機能が障害されると酸素が十分に取り込まれなくため、酸素状態が悪化します。
O(Orientation 意識):意識障害あり
肺の炎症が全身を回ることで意識が悪くなります。意識状態が悪くなるのは肺炎に限らず、炎症が重篤なことを示す指標になります。
P(Pressure 圧力):血圧(収縮期)90mmHg以下
全身にばい菌が回った状態を敗血症といいます。敗血症によるショック状態にて血圧が低下します。
軽症:上記5つの項目をいずれも満たさないもの
中等度:上記項目の1つまたは2つを有するもの
重症:上記項目を3つ有するもの
超重症:上記項目の4つまたは5つを有するもの。ただし、ショックショックがあれば1項目でも超重症となる
《肺炎の治療法》
肺炎の治療は、病原微生物を死滅させる抗菌薬による薬物療法が中心です。以前は、入院して注射薬で治療することが原則でしたが、最近は優れた経口抗菌薬が用いられるようになったため、状態によっては外来で飲み薬を中心とした治療も行えるようになってきました。
また、肺炎の治療には抗菌薬以外の薬も重要です。肺炎になると、発熱、倦怠感、咳の症状があります。咳が出ると息苦しさが増すし、体力を使うため疲労感が増してしまいます。
鎮咳薬(咳止め):咳そのものは細菌やウイルスなどの外敵や痰を体外へ出しやすくする体の防御反応の一つです。その一方で、咳によって体力の消耗や不眠が長期的に続くことで体力が落ちていしまい、症状が悪化する場合もあります。鎮咳薬を使うと、これを改善することが期待できます。
去痰薬:去痰薬は、痰をやわらかくして気道のつまりを改善したり、痰と一緒に細菌やウイルスなどを体外に排出しやすくする薬です。また、気道の線毛運動を促すことで痰を排出しやすくする作用もあります。薬の成分によっても作用が異なるため、場合によっては複数の去痰薬を同時に使う場合もあります。
鎮咳去痰薬:咳を鎮め、痰を排出しやすくする薬です。相乗効果などを期待して、去痰薬と一緒に使うことも多い薬です。
その他、解熱剤など症状に応じて使用します。上記の薬を服用して症状が治まり自分の判断で治った!と思っていても、体内に細菌やウイルスが残っている場合があります。
細菌やウイルスが残った状態だと肺炎の症状が復活したり、抗生物質(あるいは抗ウイルス薬)への耐性が、カラダの中に出来てしまっているため、薬が効かなくなり、最初の症状よりも悪化する場合があります。処方された分の薬はしっかり飲みきるようにしましょう。
また、薬物療法以外に体力・抵抗力を高めるためにも、保温をして安静にしましょう。熱や食欲不振による脱水症状を防ぐため、水分を十分に補給し、栄養もしっかりとるようにしましょう。
《肺炎の予防》
肺炎に対する基本的な予防策は、細菌やウイルスをカラダの中に入れないことです。外出時にはマスクをして外から帰ったら、手洗いとうがいをして、細菌やウイルスを洗い流すようにしましょう。帰宅したら一刻も早く水で洗い流すことが大切です。また、タバコを吸う習慣のある場合は、禁煙をすることも大切です。タバコの煙を吸い込むことによって、肺の中は常に軽く炎症を起こしている状態で、慢性閉塞性肺疾患や肺がんなどにも繋がります。
そして、肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンなど予防接種も効果的です。肺炎球菌ワクチンは、平成26年10月より定期接種制度がはじまり、65歳以上(60〜65歳未満でも、心臓、腎臓、呼吸器の機能に、日常生活における活動が極度に制限される程度の障害や、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害がある場合は、定期接種の対象)になると、
5年ごとに定期接種(無料)として予防接種を受けることができる(過去に肺炎球菌ワクチンを受けたことがある人は、場合によっては定期接種が受けられないこともあります)ので対象年齢の期間を逃さないように、接種するようにしましょう。
《記事のまとめ》
小さい子からお年寄り、誰にでも起こる可能性がある肺炎。
まずは、細菌やウイルスをカラダの中に入れないよう、マスクや手洗い、うがいを徹底するようにしましょう。