発見されているものだけでも約100種類にもなるホルモン!
ホルモンの病気についてまとめました。
目次
《ホルモンの役割》
ホルモンとは、カラダのさまざまな働きを調節する化学物質です。
カラダの外側・内側で環境の変化が起きても、カラダの働きを常に同じになるように保つ役割を果たしています。ホルモンはカラダの中の内分泌腺というところで作られ、内分泌腺には、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵臓、生殖腺などがあり、それぞれに違った働きのホルモンが作られています。ホルモンは血液によって全身に送られます。
この他にも、腎臓では血圧を調整するホルモンや、骨髄では赤血球を作るように刺激をあたえるホルモン、脂肪組織では体脂肪を一定に保つためのホルモンなど、カラダの各器官でさまざまなホルモンが作られています。
そのホルモンとして発見されているものは約100種類にもなり、さらに発見され続けています。どのホルモンもほんの少しの量で効果を発揮し、ホルモンが必要な時期に必要な量を作られることにより、カラダのバランスは保たれています。多すぎたり少なすぎたりすると、さまざまな病気を引き起こします。
脳下垂体
脳下垂体は、頭蓋骨のほぼ中心にあり、額の奥約7cmのところにある小指の先ほどの小さな器官で、下垂体ともいわれます。脳下垂体を大きく分けると、脳下垂体前葉と脳下垂体後葉の2つに分かれています。
脳下垂体前葉からの刺激でうまれる主なホルモンは、骨の伸長や筋肉の成長、肝臓や筋肉、脂肪などの臓器で行われる代謝を促進する成長ホルモン、代謝を促進する甲状腺刺激ホルモン、血糖・血圧上昇などに関係する副腎皮質刺激ホルモン、乳腺発達や精子形成を促進する性腺刺激ホルモンがあります。
これらのホルモンは、他の内分泌腺からホルモンがでるようにコントロールするためのホルモンです。カラダに異常が現れたという信号が脳の視床下部に伝わり、視床下部から脳下垂体を刺激するホルモンが出されることによって作られます。カラダを正常に戻すために必要なホルモンを出す器官を、それぞれに刺激し合う働きをしています。
脳下垂体後葉で作られるホルモンは、血管収縮、水分の再吸収を促進する抗利尿ホルモン、子宮筋の収縮、乳汁放出を促進する子宮収縮ホルモンがあります。
甲状腺
甲状腺は、喉頭と気管の境目の部分にあり蝶のような形をした器官です。甲状腺ホルモンには、4つのヨウ素をもつサイロキシン(T4)と、3つのヨウ素をもつトリヨードサイロニン(T3)の2種類があり、全身の細胞の働きを活発にし、成長を助ける働きをしています。
副甲状腺
副甲状腺は、甲状腺の後ろ上下左右に4つある麦粒ほどの大きさの器官で、上皮体ともいいます。副甲状腺ホルモンは、骨や腎臓に働きかけ、血液中のカルシウムを調節する働きがあります。副腎は、腎臓の上にある三角形をした左右1対の器官です。副腎で作られるホルモンは2種類あります。副腎皮質ホルモンは、血液中の水分やミネラル、糖分の量を調節する働きがあり、副腎髄質ホルモンは、アドレナリン、ノルアドレナリンなどのストレスに対する反応を調整する働きがあります。
膵臓
膵臓は、胃の裏側にある臓器です。膵臓のホルモンは、膵臓にあるランゲルハンス島の中にある細胞で作られています。腸での消化を助けるホルモンや血液中の糖分の量をあげるグルカゴンや下げるインスリンなどが分泌され、さまざまなカラダのバランスを調節する働きをしています。
生殖腺
生殖腺は、男性と女性では位置も形も異なり、それぞれのカラダつきや機能を作り出す働きをしています。ホルモンの分泌が少なくなると、ほてり、肩こり、頭痛、汗をかきやすかったり、気持ちが不安定、憂鬱などの症状がでてきます。また、ホルモンの分泌が多くなると、体重減少、生理不順、疲れやすい、下痢をしやすかったり、脈拍増加などの症状がでてきます。
《更年期障害》
更年期障害とは、女性に多い病気で、主に女性の閉経前後に、卵巣の機能が急に低下し、ホルモン(エストロゲン)の分泌が少なくなることが原因で起こる病気です。また、精神的なストレスの影響も原因のひとつと考えられています。
主な症状としては、頭痛、ほてり、のぼせ、動悸、肩こり、腰痛、大量に汗をかく、不安になる、イライラする、憂鬱になるなど、さまざまな症状があらわれます。
治療としては、症状に合わせて、不足しているホルモンを補う薬を使います。不安やうつなどの症状が強い場合には精神安定剤を使うこともあります。たばこやストレスを避けたり、軽い運動を行うことで症状が軽くなることもあります。
《バセドウ病》
バセドウ病とは、甲状腺ホルモンが必要以上に分泌されて起こる病気です。 女性では約100人に1人に起きるとされています。大量の甲状腺ホルモンにより全身の代謝が過剰に活性化されるために次のようなさまざまな症状が現れます。
・バセドウ病で現れる症状
食欲が旺盛になり、たくさん食べられても、体重は減少
些細なことにもイライラしたり、怒りっぽくなる
暑がりになる
疲れやすくなる
動悸が長く続く
トイレの回数が増える
口が渇く
手が震える などがあります。
治療としては、薬物療法、手術療法、アイソトープ治療が行われます。
薬物療法は、甲状腺ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬を使用します。薬を飲んで徐々に抗体が体内から消えれば、服用をやめることもできます。
手術療法は、甲状腺を手術で切除し、作られる甲状腺ホルモンの量を減らします。しかし、手術後は甲状腺機能が低下気味になる場合もあります。
アイソトープ治療は、放射線ヨード療法ともいい、微量な放射線の小さなカプセルを飲むことで、甲状腺の細胞を壊すことができます。カプセル内服の前後合わせて約2週間は食事の中にヨードを含むものが入らないようにヨード制限をしておく必要があります。
ヨードを多く含む食品は、海藻類、貝類、魚類・その加工品、肉類(内蔵の部分のみ)、人工着色料、インスタント食品、こんにゃく、だし汁などがあります。この治療の良い点は、全身麻酔や手術のような負担がないことで、必要であれば繰り返し行うことも可能です。また、外来で行う場合もあります。
しかし、放射線を使う治療のため妊娠中、授乳中はこの治療を受けることはできませんし、治療後は1年間は妊娠できません。
《先端巨人症》
先端巨大症は、アクロメガリーとも呼ばれ、脳の奥にある脳下垂体と呼ばれる小指の先ほどの小さな器官にできる良性の腫瘍が、成長ホルモンを過剰に分泌する病気です。思春期までに発症すると巨人症になります。
症状としては、特徴的な手足の肥大や顔つきの変化のほかに全身に現れ、頭痛、視力低下、視野が狭くなった、噛み合わせが悪くなった、歯並びが悪い、声が低くなった、いびきや昼間の眠気が強い、高血圧、糖尿病、多汗などがあります。しかし外見の変化はゆっくりと進むので本人や家族は気づかないことがあります。
治療としては、原因である脳下垂体にできた腫瘍を取り除く手術を行うのが一般的です。腫瘍が大きいために手術が難しい場合や、手術後もまだ血液中の成長ホルモン量が過剰な場合は薬物による治療を行います。また、放射線(ガンマナイフなど)による治療を行う場合もあります。
《原発性アルドステロン症》
原発性アルドステロン症とは、副腎皮質からアルドステロン(鉱質コルチコイド)と呼ばれるホルモンが過剰に分泌されることにより生じる病気です。アルドステロンの過剰分泌は副腎皮質の良性腫瘍から生じる場合と、両側の副腎全体から生じる場合(過形成)があります。
症状としては、高血圧や血中のカリウム濃度の低下による脱力症状が現れることがあります。アルドステロン症と気付かれずに永年高血圧の治療を受けている場合もあります。
治療としては、片側の良性腫瘍が原因の場合と両側の過形成の場合とで大きく治療法が異なります。片側の良性腫瘍の場合には、手術で摘除することにより治癒が期待できます。しかしながら、高血圧は頻度の高い疾患であり、高血圧の家族歴がある場合や、すでに高血圧が長く続いている場合などには、血圧が正常化しないこともあります。このような場合でも手術後の血圧治療は、術前に比べて容易になるのが一般的です。
過形成の場合や腫瘍でも手術が出来ない場合には、アルドステロン作用を阻害する薬を用いて治療を行います。
《記事のまとめ》
ホルモンの作用については未だわかっていないことが多く、新たに発見されるホルモンもあります。
遺跡のようにどんどん発掘してホルモンの謎を解いてみたいものです(笑)