関節の痛みが強くて歩くのに支障がある・・
股関節の病気についてまとめました。
《関節の役割》
関節とは、2つの骨がしっかり繋がっている部分のことです。
関節によって、骨はさまざまな動きが可能ですが、可動範囲があり動く方向は決まっています。膝や肘は一方後にしか動きませんが、腕の関節はほぼ360度自由に動かすことができます。
主な関節に肩関節、肘関節、股関節、膝関節などがあります。
関節は部位により様々な形態と機能を持っていますが、基本的な構造として、骨の他に関節軟骨、関節包、靭帯などがあげられます。骨の表面には滑らかな関節軟骨が被っていて、硬い組織である骨同士が直接ぶつかり合わないように、クッションのような役割をしています。靱帯は骨と骨をつなぐ紐のようなもので、関節がグラグラしないようにしています。
関節包は袋のように関節を包み込み、この内側にある滑膜というところから少量の水(関節液)を分泌しています。滑らかな軟骨と関節液の存在により、関節はスムーズに動き、痛みを感じることがありません。
《股関節の役割》
股関節は、大腿骨(太ももの骨)の上端の骨頭(丸くなっている部分)が、寛骨臼=臼蓋(骨盤のくぼみ)にはまり込むような形になっています。
正常な股関節では、骨頭のおよそ4/5が寛骨臼に包み込まれています。そのため、安定性がよく、周辺の筋肉を使って前後、左右、あるいは回したりと、自在に動かすことができます。歩行時には体重の約3倍の力が加わります。
《変形性股関節症》
変形性股関節症は、関節にかかる体重を吸収してすべりをよくしている関節軟骨が傷ついたりすり減ったりして、骨が壊れたり、また棘のように増殖する(骨棘)ために生じる病気です。
成人の股関節疾患の中で、もっとも多くみられるもので、高齢者に多く人口の高齢化とともに年々増加傾向にあります。
原因によって一次性のものと二次性のものとに分類され、日本では二次性変形性股関節症の割合がとても高く女性に多いのが特徴です。
一次性変形性股関節症は、原因が分からずに関節軟骨がすり減り、骨が変形します。
二次性変形性股関節症は、生まれつきの股関節の脱臼(先天性股関節脱臼)や股関節の発育が悪いこと(臼蓋形成不全)などが原因で発症するものです。
主な症状としては、関節の痛みと機能障害です。股関節は鼠径部(脚の付け根)にあるので、最初は立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。進行すると、その痛みが強くなり場合によっては常に痛むようになったり、夜寝ていても痛むようになります。
痛みが出たり、安静により痛みが軽くなったりします。これをくり返しながら、ゆっくりと進行していく病気です。まれに、数ヶ月のうちに急激に悪化することもあります。
治療としては、負担を減らして大事に使うということが大切になります。初期のであれば、どのような使い方をすると痛みが強くなるかよく自分自身の関節の調子を観察して、日常生活と痛みを悪くしない使い方をよくマッチさせることが大切です。
痛み止めの薬を使うことも選択肢に入りますが、できれば調子の悪い時やどうしても負担をかけなければならない時に限定して使うほうがいいと思います。
また、もし過体重があるようでしたらダイエットも考えてください。
一方、痛みがあるとどうしても歩かなくなり筋肉が衰えてしまいますので、できれば水中歩行や水泳を週2.3回行うのが理想的です。運動療法はその他の方法もありますが、運動療法はどうしても疼痛を誘発してしまう可能性がありますので、慎重に始めて徐々に強度を高めていくことが重要です。
これらの保存療法でも症状が取れない場合は、手術療法を検討します。
手術の方法としては、自分の関節を温存して行う骨切り術と、人工関節に換える手術に分かれます。骨切り術には、大腿骨の内反骨切り術、外反骨切り術、骨盤骨切り術(寛骨臼回転骨切り術・キアリー骨盤骨切り術)があります。また最近では、股関節鏡を用いた手術手技も幅広く応用されています。
《膝関節の役割》
膝関節は、大腿骨と脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝の皿)で構成されています。
関節部分の脛骨はほぼ平らな形をしています。その上を、凸状の大腿骨が転がりすべるようにして動きます。平らな板と丸いものの組み合わせで、それが転がるのでとても不安定であることが想像できます。そのため、大腿骨と脛骨をつなぐ主として四つの靱帯と半月板が、膝関節を安定させるために重要な役割を果たしています。
関節の内面は滑らかな軟骨で覆われ、その間には半月板があります。関節部分は関節包で包まれており、その内側の滑膜は潤滑油の役割をする関節液が分泌されます。これら軟骨、半月板、関節液の働きによって膝関節は滑らかに動くようになっています。その曲がる角度は、正座をする時で150度前後、しゃがんだ時で約120度、歩く時では60度前後で曲がります。
《変形性膝関節症》
変形性膝関節症は、長い年月をかけて、軟骨にヒビが入ったり、すり減ってしまい、その結果、痛みや炎症を起こした状態のことをいいます。
軟骨がすり減ると、衝撃を吸収する力が弱まり、すり減った部分の骨により多くの負担が集中します。進行すると、骨同士がこすれあって表面がデコボコになったり、くぼみができたり、骨棘(骨が増殖して棘状になること)ができ、痛みが増強します。また、関節包の内側にある滑膜が厚くなって異常な関節液が分泌される、いわゆる膝に水が溜まる状態になり、腫れや痛みが増強したり動きが悪くなることもあります。
原因としては、加齢、膝に負担のかかる運動や仕事、太りすぎ、下肢の筋力低下、O脚やX脚などがあり、膝の変形などは関節により多くの負担がかかり進行が早まることがあります。
治療としては、主に保存療法と手術療法があります。
保存療法とは、痛み止めの内服、外用薬(対症療法)やヒアルロン酸注射、ステロイド注射があります。ヒアルロン酸の注射は、軟骨、関節液の重要な成分で、潤滑成分として軟骨表面の保護をします。ステロイド注射は、炎症を強力に抑え込み、鎮痛効果も高い治療になります。
手術療法は、軟骨の摩耗や骨の変化が強い場合や、O脚が強い場合、膝がまっすぐ伸びない場合などは、強い症状が慢性的に続き、なかなか良くならないことも少なくありません。こうした場合は、手術を選択することになります。主な手術の方法としては、人工関節手術や骨切り術です。
人工関節手術はもっとも多く行われている手術です。傷んだ関節の表面を数ミリ程度切除して、金属のかぶせものをします。手術後は、比較的速やかに日常生活に戻ることができます。
骨切り術は、膝の内側に病変部があり、歩行時などには内側に荷重がかかり強い痛みが起こり、下肢がO脚に変形してしまう疾患に対して行われる手術です。内反変形を矯正して、内側にかかる荷重を、正常な軟骨や半月板が残っている外側の関節に分散させます。手術後は、自分自身の関節が温存されるため、可動域が改善され、スポーツや農作業などの重労働にも耐えられます。時間の経過とともに、筋力が増強し関節機能が改善することが特徴でもあります。
膝の変形が少ない、可動域が良い、重労働を行う、スポーツをしたい方に適しています。また、強力な内固定材料の開発、人工骨の使用、リハビリの工夫などにより高齢者の方で骨が弱い方でも安全に行われ、年齢に制限なく行える手術でもあります。膝の下にある脛の骨(脛骨)の一部切除や、切り込みを入れて変形を矯正します。矯正後は金属製のプレートで固定し、骨切り部には必要に応じて骨移植(自家骨や人工骨)をします。
《記事のまとめ》
痛みが続くと精神的にも辛いです。
少しでも痛みを軽減できるように、体重を増やさないなどの自分ができる予防をするようにしましょう。