診療録の記載方法については、法的な規制がないのが現状ですが、記録を患者の診療に還元させるためには、個々の医師による独自の記載方法ではなく、一定のルールに沿った書き方をすることが望ましいです。
診療録の代表的な記載方法として、問題志向型診療記録(POMR)についてまとめました。
目次
《問題志向型診療記録(POMR)》
問題志向型診療記録(Problem Oriented Medical Record=POMR)とは、診療記録の作成方法であるPOシステムで書かれた診療記録を指します。
これは、診療記録の作成方法として1968年アメリカのWeedにより発表されたものです。今までの診療記録は、診療の経過を序列的に並べていたものでしたが、POシステムは患者のもっている医療上の問題点に焦点をあわせ解決を目指すシステムです。
患者の身体的精神的な問題点を整理し、問題解決に向けての論理を組み立てていく作業を行います。そのためには医師も看護師も問題点を共通理解し、問題解決を共通理解し、共通計画の下に治療作業を行います。
また、このシステムは新しい方法で診療記録を作成することだけを目的とするだけではなく、作成したものを監査・修正し、診療記録を完成させ患者の診療に役立てることを目的としています。
《問題志向型診療記録(POMR)の作成》
この記録には以下の4つの基本要素が含まれます。
①基礎データ(Date Base)
主訴、患者の生活像(patient profile)、原病歴、既往歴、システム・レビュー、理学所見、検査データが含まれます。これらの基礎データの上に、新しいデータが追加され、診断や治療の方針を決定する基礎的な材料となります。
②問題リスト(problem List)
患者の問題点を箇条書きにし、番号をつけて記録します。これは、本の目次にあたる表であり、診療録の冒頭におき、この表をみれば、現在の患者の問題点とその解決状況がわかるようにまとめられるべきものです。また、問題リストには、診断ケアに役立つ情報であれば、診断名に限定せずリストアップすることが望ましいです。
③初期計画(Initial Plan)
ここの問題点に対して、次の要領で診断及び治療を計画します。
- 診断上、また患者ケア上に必要な諸作業計画(diagnostic plan):診断を確定するための検査の選定や、基礎データを集めるための計画です。
- 治療上の計画(therapeutic plan):治療上の継続的な計画を立てる。
- 教育的計画(educational plan):患者とその家族への教育計画を立てる。
④経過記録(Progress Note)
個々の問題点ごとに、その状況を診断録に記載します。日々の記録は、時系列に行った医療行為を記載していきますが、その記載は、問題ごとに以下のSOAPの4項目に整理した記載をします。
叙述的記録(Narrative Notes)
S(subjective) :患者が直接提供する主観的情報
O(Objective) :医師や看護師が取り出す客観的情報
A(Assessment):医師や看護師の判断
P(Plan) :患者の判断、治療方針、患者への教育
経過一覧表(Flow Sheets):患者の経過中に現れる種々のデータや所見などが、一見してわかるような一覧表です。
⑤退院時要約(Discharge Summary)
退院時には、S・O・A・Pにわけ、最終的経過記録を作成します。
S:主観的最終的経過
O:客観的最終経過
A:評価、考察
P:退院後の治療方針
POシステムは患者の問題点を正確に把握するためのシステムです。医師や看護師、そのほか医療チームを構成する医療従事者もそれぞれの立場から患者の問題を解決し医療の向上を計ることを目的としています。
《記事のまとめ》
- 基礎データ、問題リスト、初期計画を記載する
- 経過記録の記載をする(SOAPの活用)
- 退院時要約を作成する(SOAPの活用)