睡眠時無呼吸症候群についてまとめました。
目次
《睡眠時無呼吸症候群とは?》
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が止まる病気です。Sleep Apnea Syndromeの頭文字をとって、SASともいわれます。寝ている間の無呼吸に自分でなかなか気付くことができないために、検査・治療を受けていない多くの潜在患者がいると推計されています。
《眠っている間に呼吸が止まれば睡眠時無呼吸症候群なの?》
医学的には、10秒以上の気流停止(気道の空気の流れが止まった状態)を無呼吸とし、無呼吸が一晩(7時間の睡眠中)に30回以上、もしくは1時間あたり5回以上あれば、睡眠時無呼吸です。
《なぜ呼吸が止まるのか?》
睡眠中に呼吸が止まってしまう原因は大きく分けて2つあります。
閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)
空気の通り道である上気道が物理的に狭くなり、呼吸が止まってしまうタイプです。上気道のスペースが狭くなる要因としては、首・喉まわりの脂肪沈着や扁桃肥大のほか、舌の付け根、口蓋垂(のどちんこ)、軟口蓋(口腔上壁後方の軟らかい部分)などによる喉・上気道の狭窄があげられます。
中枢性睡眠時無呼吸タイプ(CSA)
脳から呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の異常によるタイプです。肺や胸郭、呼吸筋、末梢神経には異常がないのに、呼吸指令が出ないことにより無呼吸が生じます。OSAと違い、気道は開存したままです。CSAに陥るメカニズムはさまざまですが、心臓の機能が低下した場合には、30~40%の割合で中枢型の無呼吸がみられるとされています。
《睡眠時無呼吸症候群の症状》
代表的な症状は以下のようなものがあります。自覚症状の感じ方や程度には個人差もあります。また、寝ている間のことは自分では気づきにくいのでご家族などに聞いてみると良いでしょう。
寝ている間:いびきをかく、いびきが止まり、大きな呼吸とともに再びいびきをかきはじめる、呼吸が止まる、呼吸が乱れる、息苦しさを感じる、むせる、何度も目が覚める、寝汗をかく
起きたとき:口が渇いている、頭が痛い、ズキズキする、熟睡感がない、すっきり起きられない、カラダが重いと感じる、
起きているとき:強い眠気がある、だるさ、倦怠感がある、集中力が続かない、いつも疲労感がある
《どんな人がなりやすい?》
生活習慣:タバコがやめられない、お酒が好きで寝る前のお酒が習慣化している、肥満、暴飲暴食してしまう、高血圧、糖尿病、高脂血症などの持病がある
見た目の特徴:顔や首まわりの形体的特徴がその発症と強く関連しています。
首が短い、首が太い、まわりに脂肪がついている、下顎が小さい、小顔、下顎が後方に引っ込んでいる、歯並びが悪い、舌や舌の付け根が大きい
《男性と女性比は?》
睡眠時無呼吸症候群は、男性罹患率の高い病気です。
男性に多い理由には、男性特有の脂肪のつき方、体型が関係していると考えられています。女性と比べて男性の肥満は上半身に脂肪がつきやすいのが特徴で、BMIをマッチさせた健康な男女の比較によると、男性では頚部への脂肪の分布割合がより高い傾向がみられます。このような男性特有の体型が罹患率にも影響していると考えられます。
《年齢って関係ある?》
30~60歳代の働き盛りにあたる年代は要注意です。生活習慣病を発症したり、年齢と共に喉や首まわりの筋力が衰えたり、体型が変化したりする年代でもあります。睡眠時無呼吸症候群は、男性に多いとされていますが、更年期以降には女性の罹患率も高まります。
また、閉塞性睡眠時無呼吸の特徴的な症状であるいびきも、加齢と共にその頻度が高くなります。それは、閉経によるホルモンバランスの変化が関与していると考えられています。
《睡眠時無呼吸症候群の検査》
問診の結果、睡眠時無呼吸症候群の可能性が疑われる場合には、具体的な検査へと進みます。
簡易検査
多くの場合は、まず簡易検査から行います。検査機器を使って、普段と同じように寝ている間にできる検査です。手の指や鼻の下にセンサーをつけ、いびきや呼吸の状態から睡眠時無呼吸症候群の可能性を調べます。
自宅でもできる検査なので、普段と変わらず仕事や日常生活をそれほど心配せずに検査することができます。主に酸素飽和度を調べる検査と気流やいびき音から気道の狭窄や呼吸状態を調べる検査があります。
精密検査
簡易検査で無呼吸・低呼吸指数が5以上の場合、精密検査に進みます。簡易検査よりもさらに詳しく、睡眠と呼吸の質の状態を調べる検査で、終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査と呼ばれます。医療機関に入院して行う検査です。基本的に睡眠時無呼吸症候群の確定診断は、この精密検査で行います。
《睡眠時無呼吸症候群の重症度分類》
睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Indexの略)=無呼吸低呼吸指数と呼び、この指数によって重症度を分類します。なお、低呼吸(Hypopnea)とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3~4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。
重症度分類
軽症 :5 ≦ AHI <15
中等症:15 ≦ AHI < 30
重症:30 ≦ AHI
《睡眠時無呼吸症候群の治療法》
睡眠時無呼吸症候群の治療法には、症状を緩和させるもの(対症療法)と、根本的に原因を取り除くもの(根治療法)とがあり、いずれも状態に合わせて最適な治療法が選択されます。また、治療法に加えて、生活習慣の改善が必要になります。肥満気味の場合は、首・喉まわりの脂肪が気道を狭くしている可能性があるので、減量も治療の一環になります。
対症療法
CPAP(シーパップ)療法:経鼻的持続陽圧呼吸療法とも呼ばれ、Continuous Positive Airway Pressureの頭文字をとって、CPAP療法と呼ばれています。閉塞性睡眠時無呼吸タイプに有効なものして最も普及している治療法です。CPAP療法の原理は、寝ている間の無呼吸を防ぐために気道に空気を送り続けて気道を開存させておくというものです。CPAP装置からエアチューブを伝い、鼻に装着したマスクから気道へと空気が送り込まれます。
CPAP治療を始めることで、気になる不快な症状が出てくることがあります。我慢したり、治療を自己中止したりせずに、主治医と相談し正しく対処するようにしましょう。
気になる不快な症状
使用感:CPAP装置から送られる空気の圧力になかなか慣れず、眠れない
無意識に空気を飲み込んでしまうことで、お腹が張ったように感じたり、おならが出やすくなることもあります。
マスクがあたる鼻の周りがかぶれたり赤くなったりする
鼻・喉の症状:鼻の通りが悪い、鼻や喉が乾いてしまう
目・口の症状:目や口が乾いてしまう
耳の症状:耳鳴りがする(圧力のかかった空気が耳に抜けて不快に感じる)
マウスピース:マウスピースはスリープスプリントともいわれ、下顎を上顎よりも前方に出すように固定させることで上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぐ治療法です。
根治療法
外科的手術:アデノイドや扁桃肥大など気道を塞ぐ部位を取り除く手術が有効な場合があります。
《記事のまとめ》
寝ている間のことは自分ではなかなか気付くことができません。この病気が深刻なのは、寝ている間に生じる無呼吸が、起きているときの活動にさまざまな影響を及ぼすことです。
気付かないうちに日常生活にさまざまなリスクが生じる可能性があるので、いびきがうるさいといわれたこともある場合は、検査を受けるようにしましょう。