突然、生命を脅かすサイレント・キラー(沈黙の殺し屋)、それが「高血圧」です。
正しい血圧の知識を身につけて、普段から気をつけることが大切です。
血圧についてまとめました。
目次
《血圧は「血液による血管壁への圧力」》
人のカラダの中には、血管がすみずみまで張りめぐらされています。血管の中には血液が流れ、酸素や栄養素、ホルモンなどのカラダを正常に働かせるために必要な物質を必要な場所に運んでいます。酸素や栄養素を全身に運ぶと同時に、二酸化炭素や老廃物を回収する役割も担っています。この血液を全身へ送り出しているのが心臓です。頭の先から手足の指先に至るまで、カラダのすみずみに血液を送り届けています。心臓が日々休まず働いているから、血液は滞らないのです。
心臓は1日に約10万回鼓動するといわれています。心臓がギュッと縮むと、肺から届いた大量の酸素を含む血液が、大動脈という太い血管へ送り出されます。血液は大動脈から動脈、細動脈、毛細血管と、体の末端へ進むにつれて細くなる血管を通り、全身をめぐります。その後、細静脈、小静脈、大静脈を通って心臓へ戻り、再び肺へと送られます。
このとき肺で二酸化炭素と酸素を交換し、心臓へ戻った血液は再び大動脈へと送られるのです。酸素を含んだ血液は、心臓がポンプの役割を果たすことで全身をめぐります。
全身から戻ってきた血液は二酸化炭素を多く含むものの、肺を経由することで再び酸素を含むようになります。
心臓から大動脈へ血液を送り出したとき、大動脈の壁はぐっと押し広げられ、次の血液をためている間には広がった大動脈の壁もまた元に戻ります。
このように、動脈が血液で内側から押される圧力を血圧と呼びます。
《収縮期血圧と拡張期血圧》
血圧は一般的に2つの値があります。心臓がギュッと縮んで血液を大動脈へ送り出したときの血圧を収縮期血圧といいます。一般的には、上の血圧、最大血圧や最高血圧と呼ばれています。
これに対し、体内から戻ってきた血液によって心臓が膨らんだときの血圧を拡張期血圧といいます。一般的には、下の血圧、最小血圧、最低血圧と呼ばれています。
《測る部位で血圧も違う》
血圧を測定するときは、上腕にカフと呼ばれる腕帯を巻いて測定するのが一般的です。上腕付近には上腕動脈があり、心臓に近い大動脈の血圧を反映させることができます。上腕の血圧を測定すれば、心臓の健康状態を知ることもできるのです。
血圧は、左上腕などの同じ場所で毎回測定するのが基本です。血圧は血管の太さや状態に応じて異なるため、毎回違う場所で測定すると、血圧の推移を正しく読み取れません。自宅などで測定するときは、毎回同じ部位で測定するよう心がけるようにします。
《高血圧症》
高血圧とは、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の状態が続く場合をいいます。ただし、自宅で血圧を測定するときは収縮期血圧135mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上で高血圧といわれます。
緊張によって血圧が上昇しやすい病院などよりも、リラックスできる自宅の方が血圧は下がりやすいため、数値が低めに設定されています。このように、病院などでの緊張が測定値を変えてしまうのを、白衣性高血圧といわれます。
なお、血圧が、収縮期血圧130mmHg、拡張期血圧85mmHgに収まっている場合を正常血圧、収縮期血圧120mmHg、拡張期血圧80mmHgに収まっている場合を至適血圧といいます。
血圧が高くても通常、特徴のある症状は現れません。症状が現れないのにもかかわらず、カラダの中では知らず知らずのうちに、高血圧の悪影響がじわりじわりと広がっていきます。血圧が高いということは、血管の壁に強い圧力がかかっているということなので、それを治療せずにいると、血管が傷めつけられて、老化現象が早く進んでしまいます。
血管は全身に張りめぐらされていて、血管のない部分というのはほとんどありません。なので高血圧の影響は全身に及びます。脳や腎臓、眼の網膜などの血管がたくさんある所ほどその影響を受けやすく、脳梗塞、腎不全、眼底出血などを引き起こします。また、血液を送り出す際に負担がかかる心臓も、高血圧の合併症が現れやすく心不全などを引き起こします。
《一次性高血圧とニ次性高血圧》
高血圧は、一次性高血圧と二次性高血圧の大きく2つに分類されます。一次性高血圧は、本態性高血圧ともいわれ、原因の特定が難しく、生活習慣や遺伝、体質などが重なることで発症すると考えられています。その主な要因は、塩分、脂肪、アルコールの過剰摂取、喫煙、運動不足、ストレスなどがあります。
二次性高血圧は、別の病気によるものや、病気の治療のために服用した薬によってなる高血圧をいいます。
二次性高血圧の種類は以下のようなものがあります。
・腎実質性高血圧:最も頻度が多いとされる腎性高血圧の一つです。腎臓のろ過機能をつかさどる糸球体に異常が起こる慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎などによって腎臓の機能が障害されると、高血圧になることがあります。
・腎血管性高血圧:腎性高血圧の一つです。腎臓の動脈が動脈硬化などの原因で狭窄し、それによって血圧を上昇させるホルモンの分泌が促進されることで発症します。
・内分泌性高血圧:体内の臓器から分泌されるホルモンなどの影響を受けて血圧が上昇することがあります。副腎からアルドステロンが過剰に分泌されることで起こる原発性アルドステロン症による高血圧が最も多いといわれています。高血圧を伴う他の内分泌系の病気には、クッシング症候群やバセドウ病、甲状腺機能低下症、末端肥大症などがあります。
・血管性高血圧:大動脈に炎症が起こる大動脈炎症候群などの病気によって、大動脈が狭窄して高血圧になることがあります。
・薬剤誘発性高血圧:血圧を上昇させる作用がある薬剤の投与によって起こる高血圧です。高血圧を招く要因となる薬剤には、非ステロイド性抗炎症薬、経口避妊薬、交感神経刺激薬などがあります。
原因によって異なりますが、高血圧の要因となる病気を治療することで、血圧を改善できる可能性があります。
治療としては、生活習慣改善と薬物療法があります。
生活習慣の改善
生活習慣の改善としては、以下のようなものがあります。
・食事の減塩、体重の減量
食生活を改善して血圧を正常値に近づけるようにします。具体的には、塩分を控えることで血圧が約5mmHg下がるといわれています。醤油には塩分も含まれているためかけすぎに注意するといったことも必要です。
野菜や果物を積極的に取りましょう。食生活の改善とともに、太り気味の人は減量にも取り組みます。自分の身長に合う適正体重と肥満度を示す体格指数(BMI)は、以下の計算式から求めることができます。
標準体重=身長(m)×身長(m)×22
BMI=体重(Kg)÷身長(m)×2乗
BMIは22が理想的です。BMIが25以上になると生活習慣病になる確立が2倍を超えます。
・運動の習慣化
運動を習慣化することも大切です。ウォーキングやジョギング、サイクリングなど簡単に取り組めるものでいいです。自分が継続しやすい運動を選ぶとよいでしょう。
・酒は適量に
無理に禁酒する必要はありませんが、お酒を飲みすぎてしまう人は、適量にとどめるようにしましょう。目安とする1日の適量は、ビールなら中瓶1本(500ml)、ワインならグラスに1.5杯(180ml)、日本酒なら1合(180ml)、焼酎なら0.6合(108ml)程度です。女性ならその半分になります。
・喫煙
タバコについては血圧との直接的な関連はありません。しかし、何よりタバコは動脈硬化の最も強力な危険因子であることは間違いありません。血圧をコントロールする意味はあくまで動脈硬化の予防なのでいくら血圧に気をつけてもタバコを吸っていては意味がないといえます。
薬物療法
薬物療法としては、以下のものがあります。
カルシウム(Ca)拮抗薬:血管を拡げて血液の通る量を増やし血圧を下げる
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB):血管を収縮させるアンジオテンシンⅡが受容体に結合するのを阻害して血管を拡げ、血圧を下げる
アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬:血管を収縮させて血圧を上げる物質であるアンジオテンシンⅡを作る酵素の働きを阻害して、血管を拡げて血圧を下げる
利尿薬:塩分や水分を、尿の出を良くして減らし血圧を下げる
β遮断薬(含αβ遮断薬):心臓のポンプ機能をゆるやかにさせて、血圧を下げる
α遮断薬:血管の収縮を抑え、血圧を下げる
1種類の服用だけでは降圧目標を達成することができない場合には、併用して服用することもあります。
《記事のまとめ》
薬での治療も必要ですが、生活習慣の改善が血圧を安定させるために最も重要です。
いきなり徹底的に行うのは難しいので、少しずつ継続できる範囲で行っていきましょう。