小腸の一部ともいわれる十二指腸
十二指腸の病気についてまとめました。

 

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《十二指腸の役割》

十二指腸は、正しくは小腸の一部ですが、一般的には空腸と回腸の部位を指して小腸といわれます。指12本を横に並べた長さということに由来していますが、実際には指12本分よりも長く、形はC字状で長さは約25~30cmあります。

 

十二指腸の中間あたりには、胆のうからつながる胆のう管と、膵臓からつながる膵管の開口部があり、ファーター乳頭と呼ばれています。

ファーターとは、発見したドイツ人解剖学者アブラハム・ファーターから名づけられています。胃で消化された食べ物が十二指腸に入ってくると、さまざまなホルモンが分泌されます。ホルモンが胆のうや膵臓に、働きかけることによって胆汁と膵液が押し出され、ファーター乳頭から十二指腸の中に流れ込みます。胆汁や膵液によって混ぜられた食べ物は空腸に送られ、さらに消化・吸収が行われます。

 

十二指腸で分泌されるホルモンは、セクレチン、コレシストキニン、胃抑制ペプチドがあります。

セクレチンは、胃液で酸性になった食べ物が入ってくると十二指腸の粘膜から分泌されます。アルカリ性である膵液の分泌を促したり、胃液の分泌を抑えるように働きかけます。
コレシストキニンは、脂質の多いものが入ってくると十二指腸の粘膜から分泌されます。胆汁や膵液の分泌を促します。
胃抑制ペプチドは、ブドウ糖や脂質が刺激となって十二指腸の粘膜から分泌されます。このホルモンが協力しあって働きを助けています。

 

《十二指腸潰瘍》

 

十二指腸潰瘍は、十二指腸の粘膜に潰瘍ができる病気です。胃に近い部分に多くみられます。十二指腸潰瘍は胃潰瘍とは異なる点が多く、十二指腸の壁は胃壁に比べて筋層が薄いので深く進行し、出血、穿孔を起こしやすい傾向があります。ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)の感染率が非常に高いといわれています。

 

十二指腸潰瘍は周りの組織との境界がはっきりした潰瘍で、粘膜をこえて深く進行します。20~40歳に多く発症し、胃潰瘍と同じように、粘膜による防御の働きと胃酸による攻撃とのバランスが崩れることで発症し、ストレスや遺伝的要因も関係しています。

 

症状としては、腹痛がもっとも多く、特に夜間、早朝などの空腹時に起こり、食べ物を食べると症状が緩和します。また、潰瘍部分が出血し、時には吐血、下血が起こったり、狭窄や変形を起こし、食べ物が通過しにくくなり、嘔吐を起こしたりします。

 

検査としては、X線検査、内視鏡検査が行われます。X線検査では、十二指腸の変形(攣縮、陥没など)をみつけます。内視鏡検査では、X線では不可能な活動性の判定ができます。活動期には、潰瘍の部分に出血や浮腫、腫れがみられます。

また、治癒期には、潰瘍が浅く小さくなりつつあり、特に潰瘍にみられる白苔が小さくなった様子などが観察されます。

 

治療としては、基本的に胃酸分泌を抑制する薬剤により治療します。ピロリ菌の感染が確認できた場合は、ピロリ菌除菌治療として、胃酸分泌を抑制する薬と2種類の抗生物質を使用します。ピロリ菌以外の原因で潰瘍ができている場合は、その原因を取り除く必要があります。近年増えているのが、解熱鎮痛剤や抗血小板剤(NSAID)による潰瘍です。

 

この場合は、薬の内服を止めることができれば潰瘍は治りますが、それができない場合は、長期間にわたり胃酸の分泌を抑える薬を併用する必要があります。出血時には、内視鏡検査で潰瘍からの出血を確認し、内視鏡による止血治療を行います。穿孔がある場合は手術が必要です。

 

小開腹や腹腔鏡下に穿孔部位を閉鎖、大網と呼ばれる腹腔内の脂肪組織を用いて被覆します。症状が軽症や発症早期の場合は手術をしないで薬物治療で自然閉鎖を期待する方法をとることもあります。

 

食事療法として、胃の安静と酸分泌を刺激しないことを目的に、消化の良い柔らかい食事を少量づつ数回に分けて摂取することが勧められています。また、ミルクやバニラのアイスクリームは胃酸を中和し、栄養バランスに富んでいるので、特に欧米では勧められています。

 

急性期を過ぎるとある程度普通に食事を摂取してもらっても構いませんが、規則正しい食事習慣が大切です。また、アルコール飲料、タバコ、カフェイン飲料は好ましいものではなく、特にタバコは潰瘍治療を遅延させて再発しやすくなるため禁煙をお勧めします。

 

《十二指腸がん》

小腸にできるがんのうち、この十二指腸にできるがんが圧倒的に多いといわれています。十二指腸がんの中でも乳頭部にできる乳頭がんは、他の部位にできるがんと比べて症状も異なってくるため、十二指腸がんとは別に考えられることもあります。

 

十二指腸がんは、初期の段階では症状が現れません。進行してくると、発生する部位により症状は異なりますが、腹痛、吐き気、嘔吐、貧血、黄疸などが現れます。十二指腸は、カラダの栄養分を吸収する働きをしているため、十二指腸が機能しなくなると、栄養素が消化吸収されにくくなることにより体重減少が起こったりという障害が起こります。また、大きな腫瘤を作ることが多く、腹部腫瘤として現れることも多くなります。

 

治療としては、外科療法、放射線療法、化学療法があります。どの治療方法を選択するかは、がんの進行度や部位、大きさ、患者の年齢なども考慮して行います。

 

十二指腸がんは、早期に発見できれば、内視鏡による治療でがんを切除することができます。

 

十二指腸がんが乳頭部にあり、がんが乳頭部の表面に限定される場合は、内視鏡的乳頭部切除を行うことができます。しかし、乳頭部がんがもっと大きくなっている場合や、深く浸潤している場合は、手術により乳頭部切除を行います。

 

また、がんがかなり進行していて手術により切除できない場合や、患者の年齢等により手術ができない場合には、放射線療法や化学療法が行われます。手術後にがんが再発や転移をしてしまった場合は、抗がん剤投与による化学療法を行います。

 

十二指腸がんは、早期の段階で発見された場合、治る確率はかなり高くなっていますが、非常に症例数の少ない病気のため確立された治療法はありません。

そのため、早期に発見し治療をすることが重要であることがわかります。日常生活でできることは、タバコを控えること、ストレスを上手に解消してリラックスする時間を作ること、働き過ぎ、過労にならないように気をつけること、十分に睡眠をとること、食事に関しては決まった時間に食事をして暴飲暴食をしないことなどです。

 

《記事のまとめ》

十二指腸とストレスは、とても深い関係があります。そのため、せっかく治っても、またストレスの多い環境に戻れば、再発を招くことになります。

ストレス以外にも、喫煙や過労、暴飲暴食など、病気を引き起こす誘因となるものをできるだけ避ける必要があります。

また、食事では、消化の悪い食べ物や刺激の強いものは避けるようにしましょう。負担を減らすために、食べ物はよく噛むことを心がけてるようにしましょう。

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